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TRIZと様々な「設計手法」「発想法」について

受験生の頃、私はいわゆる参考書コレクターでした。当時、「頭の体操」や「ホイホイ勉強術」といったベストセラーで知られる多湖輝先生の本に「受験参考書が丸まる一冊役に立つなどという事はない。一冊の内5ページでも参考になったと思えたらその本は当たりである。」と書かれていたことを思い出します。

それから、方法論の類は、本人がその課題意識からボトムアップで勉強して採用するもので、トップダウンで強制するものではないということです。

さて、‘96年、TRIZが「超発明術」というキャッチフレーズで「日経メカニカル」誌に特集され、ちょっとしたブームが起こりました。(私も一部の記事を書かせていただきました。)

「超発明術」は大変キャッチーなコピーで、当時のブームのけん引役を果たしたといえますが、多くの誤解も招いてしまったように思います。過去には、私自身も、いわゆるTRIZコンサルの方が、(魔法のような超発明術であるならば)TRIZで発明されたヒット商品を今すぐ見せろと詰め寄られるところを見たことがあります。

そもそも、古今東西「手法」と称されるものに万能なものはありません。TRIZは基本的に物理的なリソースが定義できる機械・ハードウエアなどを対象にしていると思いますし、例えばトヨタ生産方式(TPS)は工場におけるハードウエア量産に適用するものです(トヨタの実践の中にビジネスやソフト開発に応用できる知見はもちろんたくさんありますが、それはまた別の話)。それぞれ唱導される方の深く広い経験に基づいたものですので、森羅万象に適用できるかのように錯覚してしまうこともあります。

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TRIZは「発想法」に分類するのが自然だと思いますが、簡単に言えば
・解決すべき課題を物理的表現に言い換える(手を乾かす→液体を動かす)
・「物質-場」などのテンプレートに当てはめる
・標準手法の適用を試みて、技術的矛盾を解決するアイデアを探す
という感じで、先人の知恵を別の新しい分野に適用できるようにしたものと言えます。

興味深いのは、TRIZがすでに課題の周辺にあるものをリソースとして活用しようとするところで、低コスト化のアイデアもいろいろ引き出せる反面、Nam P. Suh先生の公理的設計法でも戒めている「機能の独立性を損なう」案が出勝ち、という問題があります。

物理的な背反・矛盾を解消するヒントを出せるTRIZですが、皮肉なことにTRIZ自体に関わるこの矛盾は解けず、冒頭の受験参考書論のようにさまざまな手法の観点を組み合わせて(機能の独立とリソース活用の)バランスを探る、あるいは、公理的設計法の側で「リソースを活用する」といった項目を必要機能に織り込むといった工夫が必要になります。現実の製品設計では頻繁に起こることだと思います。

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