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TRIZの「進化のトレンド」は「何を作るか」の指針でもある

設計の過程で生じる物理的矛盾を解決するヒントを出すのがTRIZですが、もう一つ「進化のトレンド」という興味深い項目があります。この「進化のトレンド」は「どう作るか」を超えて「何を作るか」に示唆を与えているといえます。潜在するニーズを見出すといったことではなくて、システムがどのような方向で進化するかの法則性を考えることで、製品・サービスがどのような方向に進化するかのヒントも得られる、という感じです。

「進化のトレンド」とは、システムが進化する過程のパターンを整理したもので、私のお気に入りは、例えば以下のようなものです。

『似た機能の単体(モノ)→二体(バイ)→多体(ポリ)の進化』トイレの手洗い場のハンドドライヤーが、下向きに(弱い)温風を出す「単体」から、三菱電機ジェットタオルのように向かい合わせの温風の間に手を差し込むようにして性能を上げた「二体」、さらにダイソンのようにさらにエアブレードを構成した「多体」のシステムに進化。

『異なる機能の単体→二体→多体の進化』手洗いシンクそのものに蛇口だけでなく、液体せっけん、ハンドドライヤーなどの異なる機能を盛り込み、一か所で様々な機能を実現。

『エネルギー変換回数の減少』 200年以上の歴史を持つ内燃機関ですが、燃料を霧状にして空気と混ぜ圧縮して点火するという、実に複雑なエネルギー変換を行っています。そのため、トルク(回す力)が出せる範囲が狭く応答も遅く、トランスミッションやとトルクコンバータといった複雑な機構が必要になります。この進化の法則によれば、FCを飛ばしてEVへ向かうことになるのでしょうか。

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※ハイブリッドシステムは、さらに複雑なエネルギー変換を導入してしまったともいえますが、異なる機能を組み合わせて効率を大幅に上げているので、電動化時代に向けて想像以上の「ロングリリーフ」になっていることも納得できます。ガソリンスタンドでの給油という、既存のインフラと使い勝手を変えることなく、2倍以上の効率化を実現しています。航続距離が伸び給油の頻度が下がることは、喉元過ぎてオイルショックを忘れ、税制優遇のある個人向け小型(といってもでかい!)トラック市場が沸騰している米国のユーザーでも嬉しいはず。ハイブリッドは乗り味がスポーティーとは言えませんが、「パワーモード」に入れると、(燃費のことはさておいて)エンジンとモーターが力を合わせて目覚ましい加速を見せてくれます。

また「進化のトレンド」の中にその見出しはありませんが、リソース活用の究極の姿として『機能だけがある状態への進化』というものもあります。ある機能を「他のもの」で肩代わりしたり、マクロ・ミクロの構造を見直すことで「もの(物体)がないが機能が実現されている」という状態に進化させることができます。例えば、自動車のアンテナは、ポールアンテナから短いロッド型やシャークフィン型へと小型化、あるいはガラスアンテナに進化し、受信性能を確保しつつ「アンテナが存在しない」という状態に近づいています。PCやテレビでスクリーンそのものがスピーカーになる製品がありますが、これも同様の例です。

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